Jリーグ/プロサッカークラブ
ガンバ大阪
あらゆるスポーツの中でも走行距離が長く、運動量も多いサッカー。ケガと常に隣り合わせのため、ケアやコンディショニングには人一倍気を抜けない。2014年にはJリーグ、天皇杯、Jリーグカップの国内3冠を果たした。ガンバ大阪の遠藤保仁選手、倉田秋選手、桝井周トレーナーにコンディショニングやそれにまつわる治療器について話を聞いた。
痛みは一種の危険信号。
痛みと上手に付き合うのがケガをしない秘訣。
MF #7
遠藤保仁
Yasuhito ENDO
遠藤選手は大きなケガがないイメージがありますね。
そうですね、ケガで欠場したことはほとんどないですね。
サッカーはケガの多いスポーツかと思います。ケガをしない秘訣はなんですか。
痛いことはいっぱいあるんですよ。僕は痛みがあっても出場できればいいと思うタイプで、痛みとともに生きていくというか。痛み止めの処置をすると限界を超えてしまうことになるので、それくらいなら、ある意味ストッパーが効いている状態でプレーしている方が僕はいいですね。だから痛み止めの注射や薬を飲むこともほとんどありません。痛みが一種の危険信号になっていて、限界がきたら交代するというふうに、痛みと上手に付き合っているのが秘訣かもしれません。
そのスタンスは学生時代からですか。
捻挫もテーピングすればどうにかなりますし、学生時代に骨折した時も、痛いまますごしたので痛みには強い方かもしれません。治療で病院に通った記憶はありませんね。痛みを持ってプレーしている時は相手にハンデを与えている、くらいに思ってプレーしているんで。
食事もプロスポーツ選手の仕事の一つかと思います。どう気遣っていますか。
人並みではないですかね。もちろんケーキのバカ食いとか深夜に食事とかはしませんけど、その代わりプロテインも飲みません。明日死ぬかもしれないんだから、好きなことをしようっていう。基本的なことしかしていないです。
体にいいと勧められたら試しますか。
興味がてらに試しまね。まずいとその後は食べないですが(笑)。
コンディションには敏感な方ですか。
今日は疲れているなとか、体が重いな、とかはあります。だからといってそんなに気にすることはありません。その状況下でがんばればいいかな、って。
サッカーはスポーツの中でも平均走行距離が長いです。疲労回復はどうしていますか。
自分が欲しているものや科学的によさが証明されているものを食べて、寝れば大丈夫でしょう。病は気からを信じているので、結局そこにたどり着きます。
筋肉を温めて、ケガの予防、進行を防ぐという意味合いでラジオ波の存在は大きい。
20代の頃と身体の感覚は変わっていますか。
まだまだ攻める気持ちは変わっていないけれど、回復が遅くなるなど、変わってはいると思います。でも、それはそれでいいんじゃないかな、と素直に受け入れています。だからといって翌日早いから、夜、遊びに行くのをやめようとかはないです(笑)。オフの日は一切トレーニングはしませんし、ボールを触るのも子どもと遊ぶ時くらいですね。
自然に任せているスタンスですよね。治療器にもあまり頼られないですか。
筋肉系のケガをした時はマッサージをしてもらいますけど、基本的に寝れば治ると思っているタイプなんですよ。ただ、マッサージの際にラジオ波は使ってもらってますし、メンバーも誰かしら使っているので毎日稼働してますよね。練習前にラジオ波で筋肉を温めることで、ケガの予防になりますし、ケガをしている箇所に関しては再発予防というか、進行を防ぐという意味合いで使っています。
「フィジオ アクティブHV(ハイボルテージ治療器)」を使ったことはありますか。
トレーナーに説明を受けて、使ったことはありますよ。電気は微妙に感じるくらいが一番好きです。あまりこまめにトレーナー室に行くほうではないですが、一度説明を受けて試しはします。
プロになられて今年で20年。当時と今でコンディショニングにまつわる状況は変わっていますか。
昔は腹筋、背筋、腕立てをしておけばいいみたいな感じ。体幹って言葉もありませんでした。僕がJリーグに入った頃は超音波が主流で、ラジオ波のような器機はありませんでした。その点で間違いなく進歩していると思いますし、トレーナーの人数も充実しています。治療全体のクオリティは20年前に比べて格段に上がっています。ガンバ大阪もその環境は年々進化しているし、昔より情報が入ってくるようになりました。僕はあんまりしていないですが(笑)、年齢を重ねるといいトレーニングとケアをするのがより重要になってきますね。だからこそカズさんや中澤さんが活躍できているんだと思います。
遠藤選手にとって治療器とはどういう存在ですか。
僕らにケガはつきもの。少しでもそのリスクを避けたり、ケガをしてしまったら少しでも早く復帰できるよう、その手助けをしてくれる重要なものです。僕らの仕事にとって、治療器はかなり大きい部分を占めているので、今後もよりいい製品を提供してくれたらありがたいです。
ケガ防止にウォーミングアップ前のラジオ波は欠かせません。
MF #10
倉田 秋
Shu KURATA
倉田選手は大きなケガをされて、4カ月ほど戦線離脱されたことがありましたよね。
最初は足が動かなくて、2カ月くらいはずっと安静でした。復帰してもケガをした瞬間の恐怖心と闘うのが本当に大変でしたね。行こうと思っても体がこわばってしまって。それが復帰して半年ほど続きました。
ケガをされてから体に対する意識はどう変わりましたか。
やっぱり筋トレやストレッチ、コンディショニングケアの大切さを学びましたね。ケガの治療中も気持ちが落ち込まないように「下半身が動かないなら、上半身でも鍛えるか」ってその時にできるトレーニングをしていました。それまで積極的に体を鍛えるタイプではなかったので、それ以来いろいろ教わりながら自分の体に向き合っています。
セルフトレーニングは何をしていますか。
懸垂を10回×5セットくらいです。足を早くする、体を大きくするにしても上半身をしっかりさせていないといけないですから。
セルフケアはどのようなことをしていますか。
入浴時は酵素を入れて15〜20分くらい浸かります。お風呂から上がったらポールを使ってストレッチ。体にいいものは選手同士で情報交換しています。食事も栄養価の高いもの、体にいい食材などを聞いて取り入れています。特に赤身の肉が好きなので、よく食べていますね。試合の2日前に酵素風呂、前日には焼肉を食べるのがルーティン。焼肉は400〜500g 食べていると思います。焼肉を食べたら翌日の調子がよかったので験担ぎの意味合いもあります。
コンディショニングケアでは治療器をかなり使われているそうですね。
これまでは超音波や電気が多かったのですが、2年前に初めてラジオ波を使って驚きましたね。これまでの超音波治療よりも温まりが早いですし、温熱のなかでもかなりいい。僕は試合中、脚の筋肉が固まることが多いのでラジオ波でケアしています。特によく張るふくらはぎも、すぐに温まって硬くなっている部分がほぐれていく感じがします。ケガ防止にウォーミングアップ前のラジオ波も欠かせません。痛い部分の筋肉を温めてから練習すると、練習後の疲労の残り方が違います。ラジオ波でずっと足首をケアしていますよ。
治療器があることでケガの治りも早くなる。
おかげで選手生命を延ばせていると思います。
サッカー選手は痛みと上手に付き合っていかなければならない職業だと思います。痛みは我慢する方ですか。
普段は痛い、痛いって言いますが(笑)、試合中は我慢してしまいますね。試合はやるしかない気持ちとアドレナリンが出ているのでそこまで痛みを感じないです。
10代の頃と体の感覚は変わりましたか。
パフォーマンスは上がっていると思います。当時より今の方が体も大きくなっているし。
最後に倉田選手にとって治療器とはどういうものですか?
自分では治せないところもケアしてくれるし、治療器がなかったら治りも遅くなると思います。治療器があることで選手生命を延ばせていると思うので、僕らに絶対必要なものです。プロ入りして11年、当時は若いのであまり治療をしなくてもよかったので気づいていないだけかもしれないですが、進歩を感じます。昔はラジオ波のような器機もありませんでしたし。電気は苦手なんですけど、ラジオ波はそんなに刺激が強くなくて僕でも安心して使えるところもいいですね。
マッサージ以外のコンディショニングの指導をすることもトレーナーの役目。
トレーナー
桝井周
Chikashi MASUI
ガンバ大阪のトレーナーとして16年。当時と今ではコンディショニングで変化を感じるところはありますか。
経験のある遠藤選手などは自分でできることは自分でするので、それ以外の足りないところ、できないところをトレーナーがケアしています。キャリアのある選手の背中を若い選手は見ています。それを参考にしているので、マッサージを受ける選手は減っているかもしれません。今はマッサージ以外に器機を使った筋トレ方法など、トレーニングの指導もトレーナーがするようになりました。
トレーナーになられた頃と今では、トレーナーの概念は変わっていますか。
昔は治療がメインでしたが、今は選手自身が自分の身体を知らないとよくならないので、コンディショニングなど様々な指導もするようになりましたね。
ラジオ波を導入したきっかけを教えてください。
ガンバのスタジアムを新しくするにあたってメディカルルームも新設することになりました。それで私が東京ヴェルディで働いていた時代にお世話になった国立スポーツ科学センターにおられる、オリンピックの日本選手団のトレーナーも経験されている松田先生におすすめの器機を聞いたところ、推薦いただいたのがラジオ波。それまでラジオ波自体を知らなかったのですが、先生の「オリンピック選手をケアして、かなり良かったので間違いはないでしょう」という一言が決め手になって一度試してみることに決めました。
ラジオ波を最初に受けた時の感触はいかがですか。
急激に深部から温まったので驚きました。試合やトレーニング後の筋肉疲労や緊張を和らげるのに使えるので、選手の評判もよく、コンディションを上げるのにはすごく役立っていると思います。選手の中には練習前に使う人もいますね。施術中は選手が順不同に訪れて私の手がふさがってしまうので、使い方を教わってセルフケアをする選手もいます。
ラジオ波を使い始めてコンディショニングで変わったことはありますか。
選手からは「すぐ温まるから、ラジオ波をしてから練習に行きたい」と言われますね。超音波は温めるというよりは筋肉をほぐす感じですから、温めるとなるとお風呂で温浴しなければなりませんでした。だから長時間の入浴が苦手な選手にはラジオ波は好まれます。
ハイボルテージはマッサージとの併用がしやすいのがいい。
ガンバ大阪のクラブハウス内にある、トレーナールーム。タオルや脱衣カゴなど細かな備品もブルー×ブラックで統一されている。3 床あるベッド脇にはラジオ波器機を2台完備。その他にもハイボルテージや超音波などの器機も揃う。
ハイボルテージ治療器も使ってらっしゃいますね。
10年くらい前から使っていますね。日本代表が遠征で使っていて、遠藤選手がそこで情報を仕入れて使っていたんですよ。それを彼から聞いてガンバ大阪にも導入しました。筋肉の緊張が長引いている場合に使いますね。ただ電気が苦手な選手もいますので、好き嫌いが分かれますね。
昔から使っていたハイボルテージと比べて携帯型ハイボルテージの違いをどう感じていますか。
ここまでコンパクトな器機は見たことがなかったです。各部位にマッサージをして、まだ硬い部分にはハイボルテージをかけて他の部位をマッサージするなど、マッサージとの併用がしやすいですよね。大型器機に比べて移動が楽ですし、充電で動くし、タッチ式も使いやすい。出力の調整もしやすいです。
「フィジオナノ」はいかがですか。
倉田選手が日本代表で遠征する時に持たせました。倉田選手以外の選手にも寝る時にも使うように言って貸し出しているせいか、チームに10台ほどあるはずの在庫がいつも無いほどです(笑)。
筋肉の深部を温めるのは難しいけれど、ラジオ波なら深部から温まる。
最近試用していただいた圧力波治療器の感触はどうですか。
これはびっくりしましたね。圧力波で治療する器機はこれまでなかったですし、効果もありますし。少し痛みを伴う治療ですから、選手はシーズン中なので、念のため弱い出力で硬くなった筋繊維をほぐしています。監督やコーチは痛くても仕事に影響がないので強い出力で試しました(笑)。思ったよりも痛くなかったようで、受けたあとはすごく効果を実感していましたよ。
選手によって器機の好き嫌いはありますか。
それはありますね。倉田選手や今野(泰幸)選手はこちらが薦めた器機を素直に使い続けてくれ、練習前後に使っています。彼らは自分で操作できるので手慣れていますよ。二人に限らず、大体の選手はラジオ波を使っています。
桝井トレーナーは身体を温めることに対してどうお考えですか。
スポーツ選手のケガのほとんどは筋肉系なので、温めることで予防になります。筋肉をほぐすうえで温めることは一番大切ですね。ただ筋肉の深部を温めるのは難しい。ラジオ波を使い始めて、深部から温まることを実感していますし、深部を温めることが本当に大事だと改めて感じています。サッカーは90分間走り続けますし、ジャンプをしたり複合的な動きが多いです。どうしてもケガが多く、ケガと付き合わなければならない職業。だからラジオ波は選手からのリクエストの多い器機です。
ガンバ大阪のトレーナーとして、治療器はどういう存在ですか。
選手にとっては必需品になっていますね。選手に必要ということは、もちろんトレーナーにとってもなくてはならないものです。
Jリーグ/プロサッカークラブ
ガンバ大阪
(がんばおおさか)
遠藤保仁(えんどう やすひと)1980 年1月28日生まれ。鹿児島県出身。
身長178cm、ミッドフィルダー。背番号7。日本代表として152 試合に出場した歴代最多出場記録を持つ。類まれなゲームメーカーとしてJリーグに欠かせない存在。Jリーグベストイレブン歴代最多受賞。(12 回選出)
【主な獲得タイトル】※2018年10月現在
AFCアジアカップ優勝(2004 年)
FIFAクラブワールドカップ3 位(2008 年)
2009 AFCアジア最優秀選手賞(2009 年)
AFCアジアカップ優勝(2011年)
Jクロニクルベスト ベストイレブン(2013 年)
Jリーグ最優秀選手賞(2014 年)
※2018 年10月取材時
倉田秋(くらた しゅう)1988 年11月26日生まれ。大阪府出身。
身長172cm、ミッドフィルダー。背番号10。中学時代からガンバ大阪Jrユースに所属し、U-14 ~ 20日本代表に選出。2007年にガンバ大阪でJリーグデビュー。2015 年に日本代表A代表に初選出。
【国際大会】
AFC U-17 選手権:予選リーグ(2004 年)
FIFAクラブワールドカップ:3 位(2008 年)
EAFF 東アジアカップ:4 位(2015 年)
EAFF E-1サッカー選手権:準優勝(2017年)
国際Aマッチ:9 試合/ 2 得点
※2018年10月取材時
桝井周(ますい ちかし)1967年12月8日生まれ。岩手県出身。
2003 年就任15 期目。
※2018 年10月取材時