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表面筋電図の基礎 (1)運動単位と複合活動電位

運動単位(Motor Unit)

1つの前角細胞と軸索に支配される筋線維群をすべてまとめて運動単位(motor unit)と呼び(図1)、この運動単位は筋収縮を考える際の最小機能単位となります。
1つの運動単位に支配される筋線維は,約5~10mmの中に分布し、これを運動単位領域といい、複数の運動単位領域が少しずつ重なり合いながら筋全体に広がっています(図2)。

図1 運動単位 図2 運動単位領域
1つの筋は複数の運動単位により支配されることとなり、たとえば外眼筋ではおよそ2000個、腓腹筋では580個の 運動単位を持っています。
また、1つの運動単位が支配する筋線維数を神経支配 比と呼び、外眼筋ではおよそ13腓腹筋ではおよそ1720 と報告されておりスキルを必要とする筋では神経支配比 が小さく運動単位数が多くなり腓腹筋など大きな力を発 揮する筋では、その逆となります(表1)。
表1 運動単位数と神経支配比

運動単位には大きく分けて2つの種類と性質があります(表2)。

表2 運動単位の種類と性質

 

S型の運動単位はニューロンサイズが小さく、神経支配比も小さくなり、F型はニューロンサイズが大きく、神経支配比も大きくなります。S型は筋線維タイプⅠをF型は筋線維タイプⅡを支配し、タイプⅠの筋線維はいわゆるマラソンランナーで、筋張力は低いが疲労しにくい特性を持ち、タイプⅡの筋線維はスプリンターで張力は高いがすぐに疲労します。
力を徐々に入れた場合、まずサイズの小さな運動単位(S型)から活動を開始し、ついでF型の運動単位が参加する順序を持つことをサイズの原理といいます(図3)。

図3 サイズの原理

 

複合活動電位

筋電図は、筋線維から発生する活動電位を捉えたものです。筋が収縮する際各筋線維より活動電位が発生し、1つ1つの筋線維から発生した活動電位は容積伝導により電極に向けて伝搬します(図4)。

図4 活動電位の伝搬

筋電図に表現される波形は、電極に到達した時点でのすべての活動電位を合計したものとなり、これを複合活動電位といいます(図5)。

図5 複合活動電位

 

複合活動電位は筋収縮の程度により変化し、小さな力を出している場合は、収縮する筋線維の数は少なく、筋線維から発生する活動電位の数も少なくなり、しだいに力を増加させていくと、収縮する筋線維は徐々に数を増し、活動電位の数も増加することとなり筋電図に記録される複合活動電位の大きさは増すこととなります。